2000年01月03日

お知らせ

田中きよの ~涙の先でみつけた光~

田中きよの  ハードル競技は走る距離、ハードルの数、高さやハードル間の距離などが男女で異なる為、華麗なハードリングが見どころの女子と、力強いハードリングが見どころの男子とで異なる魅力を持っている競技である。その中でも身長や足の長さ、走り方によって一人一人違った美しさを持つ女子ハードル。わたしたちの記憶に新しいのが日本選手権100m女子ハードル決勝のレースである。優勝者は田中佑美選手、2位の中島ひとみ選手との差はわずか0.003秒という大激戦で日本選手権を制した。それは歴史に残る白熱したレースで観客を魅了した。日本の女子100mハードルは現在史上最高レベルと言われている。その熾烈な戦の中しのぎを削っているのが田中きよの選手である。今シーズンも日本選手権・国民スポーツ大会(国スポ)と日本一を決める大会に出場した。駆け抜けたシーズンを終えた田中選手に、改めてシーズンを振り返ってもらった。今シーズンについて、「メンタルの面でもっと向き合えた。気持ちの面での改善点が多い。自信をもって挑めなかったしその準備が出来なかった。」と語る。毎年自身の取り組みに自信をもって大会に挑んでいる、しかし社会人2年目となり社会人として結果を出せていない自分への迷いがあった。走りにもタイムにも満足できる結果が出ない中で苦しいシーズンとなった。
 終えたばかりの国スポについては、今シーズン一番悔しい大会だったと振り返る。シーズン最後の大会で、ようやく現地前日練習で求めていた感覚に近いものを感じ、調子も上がっていた。ようやく自分自身に期待が持てた。しかし求めていた結果は出なかった……。 陸上競技は個人競技でありながら国スポでは群馬TEAMとして大会に挑む、そのサポートや周りの選手の存在は田中選手を強くした。だからこそ今シーズン初めて涙があふれた。もちろん日本選手権のレース後も悔しさはあった。「ただ泣く資格がない。」そんな風に、いい準備ができていなかった自分を俯瞰していた。しかし国スポは悔しさの感情が勝った瞬間があった。その時のことを「心が動いた瞬間だった。」と振り返る田中選手。「その気持ちが今シーズン最大の収穫であった。」と続けた。
田中きよの  女子ハードルの魅力として多様なレーススタイルを魅力に挙げる。史上最高レベルの女子100mハードルで戦い抜くためのプランとしては、自信を持つスプリント力。その強化に特化した練習を行う事、そのためオフシーズンにはウエイトトレーニングにも力を入れる予定だ。「身体の細やかなつくりをじっくり丁寧に作り直す時間に充てる。」と計画している。苦しかったシーズンを終えてなお、すぐに来シーズンへの取り組みを語ることが出来る そのモチベーションは、「かつて自分がみた光景、光を浴びるあの場所へもう一度行きたいから。」だと言う。脚光を浴び、注目度が上がっている女子100mハードルだからこそ、仲間たちがそんな栄光の中にいる姿を目の当たりにする機会も多くなった。自分もそんな場所へもう一度……。大学時代から信頼を置く邑木コーチの元で今日も練習に励む。
 登利平からの支援ももちろん田中選手の力の源である。勤務時間を練習時間に合わせて調整し、店舗で一緒に働く方々は田中選手を娘のように応援し声をかけてくれると言う。店長は同じ競技の経験者だといい、悩みがあればアドバイスもしてくれる。「今のお店が大好きです。」現在の環境に感謝があふれる。
 社会人になり学んだ事として、「恵まれた環境に感謝すること、練習への姿勢を大事にしたい。」という。タイムや結果を追い求めすぎて苦しいシーズンを過ごした。それは今までの自分への期待からだった。しかし気づいたことはタイムや結果ではなく、自分に勝つことの大切さであった。そんな勝利の積み重ねが花開くことを信じて楽しみにしている。もちろんロス五輪に出場したい気持ちはある、だからこそ「重圧の中でも明るくいられる選手への尊敬が高まった。」シーズンのスタートからアクシデントで出遅れがあり、なかなか調子の上がらない自分への葛藤の中で悩み苦しんだ今シーズン。その最後に流した涙とその時の感情は、何も得られなかったとさえ感じていたシーズンでタイムよりも大きな物を田中選手に与えた。TEAM群馬・登利平・練習拠点のTEAMのサポートへの感謝。心の成長に必要なエネルギーを得たことが今シーズンの長かったトンネルから見えた一つの光なのだろう。